保育雑感:ミミズのいのち
ある日の散歩での出来事。
「あ。」
と言って、後ろを歩いていたSちゃんが足を止めた。
彼女の足下では、アリが集団で、小さなイモムシを襲っていた。
イモムシはまだ生きていて、必死に体をくねらせて、アリから逃れようとしていた。
そんなアリの狩りの様子をしゃがみこんで眺めること30分…
イモムシはやがて息絶えて、アリたちに運ばれて行った。
また、別の日。
「温泉が出るまで掘る!」と張り切って、
数日前から始めた畑での穴掘りの続き。
立派なミミズが出てきたので、
可愛いと思ったSちゃんは、手の上にのせて遊んでいた。
その後、ミミズは土の上に帰されるも、動かなくなってしまった。
どうやら彼女の手の熱で弱ってしまったようだ。
しばらくすると、そのミミズにアリが群がり始める。
その様子を、何も言わずに、実に神妙な面持ちで彼女は見ていた。
翌日も、穴掘りを続けるSちゃん。
そしてまたしてもミミズに遭遇。
すると慌ててその場を立ち去った。
戻ってくると、手にしていたのは水を汲んだジョウロ。
そして、土の中に帰っていくミミズに
時折、ジョウロで水をかけていた。
出てきたミミズが土の中に帰ると、穴掘りを再開するのだが、
すぐにまた別のミミズが出てくる。
そんなこんなで、ちっとも進まない穴掘り。
そして翌日、ついに穴掘りをやめた。
「なんで?」と聞くと、
「ミミズが出てきて、住処を壊して、かわいそうだから。」と。
感性を鈍らせながら大人になった私たちにとっては、さっと通り過ぎてしまうような出来事でも、
子どもにとっては大事件。
小さな生き物たちの命のやり取りや、自らの手で奪ってしまった命の手触りに
彼女の心は大きく揺さぶられたに違いない。